親が認知症になっても不動産を売却できます

相談者からよくいただくのが、
「親が認知症になったら不動産を売れなくなるんですよね?」というご質問です。

確かに、認知症などで判断能力が低下した場合には、売買契約を締結することができません。
しかし――
成年後見人を選任すれば、成年後見人が代理人として不動産を売却することが可能です。

選任までにはおおむね 2~6か月程度 かかるため、すぐの売却は難しいですが、
「まったく売れない」というわけではありません。


【親族後見人に関する誤解】

成年後見制度の話をすると、
「でも、親族が後見人になれるのは2割くらいで、弁護士や司法書士に多額の報酬を払わないといけないと聞いた」
という声もよくあります。

確かに、裁判所の「成年後見関係事件の概況(令和6年)」によると、
親族が成年後見人等(成年後見人・保佐人・補助人)に選ばれた割合は 17.1% です。

しかし、そもそも親族を候補者として申し立てている割合21.3%
つまり、親族が候補者として挙げられた場合の多くは、実際に親族が選任されているということです。


【第三者が選任されるケース】

親族ではなく、弁護士・司法書士などの第三者が選ばれるのは、

  • 親族間で意見の対立・争いがある場合
  • 本人の財産が多く、専門的な管理が必要な場合
  • 後見人候補者と本人との間に利益相反がある場合

といったケースが多いです。

また、これらの事情が解消された場合には、後から親族に引き継がれることもあります。


【一度始めたら一生続くの?】

もう一つよくある質問が、
「一度成年後見人がついたら、亡くなるまで続くんですよね?」というものです。

これは、(原則)そのとおりです。(例外はレアケースですが、本人の判断能力が回復すれば取消しになります。)
しかし、現在この制度の見直し(法改正)が進められており、
いわゆる「スポット後見人」として、必要な期間や目的だけの後見人等を選任できる仕組みが導入されるようです。


【まとめ】

新聞やネット記事では、見出しが強調されすぎて実情と違う印象を与えることもあります。
「親が認知症=売却できない」と思い込まず、
まずは一度、専門家に相談してみてください。